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奇跡の軌跡 - 書評 - 『海はどうしてできたのか』藤岡換太郎

火曜日, 4月 09, 2013
また一つ名書を読んだ。オススメ本だ。


海はどうしてできたのか (ブルーバックス)
  • 作者:
  • 出版社:講談社
  • 発売日: 2013-02-21

まず「海はどうしてできたのか」とは本書の言いたいことの一部に過ぎない。
本書では地球生誕からの歴史を360日に圧縮して地球カレンダーとして解説しているが、海が生まれたのは2月9日であり、私達の祖先であるホモサピエンスが出て来るのは大晦日の晩の23時37分である。
つまり人間は地球の歴史からすると、一瞬の出来事に過ぎない。

絶妙なバランス

地球が今のような状態になる為には様々な条件が必要だった。
まずは、炭素循環による温室効果ガスの蓄積と、"ハピタブルゾーン"と呼ばれる生物が生存できる太陽からの最適な距離の組み合わせにある。
地球上最初の生物は酸素ない状態で生まれた。高効率の酸素というエネルギ−を使いこなせない生物達の前に現れた、シアノバクテリアの登場である。それが爆発的に繁殖し、光合成によって二酸化炭素から酸素が大量に作られるようになる。
酸素が大量に生産されることでオゾンが合成され、それらがオゾン層を形成し、紫外線がカットされることにより、陸が安全になり陸上に生物が誕生するにいたるのである。

繁殖、そして大量絶滅

その後も、海洋無酸素事件などの大量絶滅を乗り越え、地球はまた冷える。そして火山活動でまた二酸化炭素が増加したら、再びシアノバクテリアが増えるという共進化と絶滅を繰り返す。
それ以外の条件もある。プレートテクトニクスにより大陸がくっついて、超大陸が生まれたかと思えば再び離れたりして、その都度海流も変化することが繰り返した先の世界に今の私たちは存在しているのだ。ヒマラヤ山脈も大陸同士のぶつかり合いで生まれたとあるけど、大陸同士がぶつかりであんなに高い山が形成されたなんてその時の光景はとてつもなかったのだろう。

海の終焉は人類の終焉

さて、本書の180項からの第4章「海のゆくえ」からは、冷えていく地球をテーマに海の終焉がテーマである。
海水が減らない理由は絶えず地球内部に取り込まれても火山活動と共に地表に戻されて循環しているからだが、地球が冷えることで循環が止まってしまうのが原因とのことである。 内容は、地球は外部(太陽)からと内部(マントル)の両方から暖められているが、マントル側のエネルギー源である放射性元素であるウラン、トリウム、カリウムがあるが、ウランの半減期は45億年であり、エネルギー量が減っていけば当然マントルの温度も下がって冷えていく。
その冷えたプレートとともに引っ張られる含水鉱物達が、地下深くで融解せずに内部に残ることで循環が止まってしまい海が消えていくというシナリオである。

原発の核のゴミ問題だって微量ながら大騒ぎされている現在だけど、地球は「既に45億年管理してますが何か?」といった感じなのだろうか。
だとするならばマントルのウランなどに比べるとチリのような存在に過ぎない核のゴミも海溝に捨てても悪くないのではとか思ってしまうが、どうなんだろうか。
是非はあるだろうが、多面的なものの見方は必要不可欠であろう。
海以前にも地球自体だって永久なんてものはなく、最終的にはなくなってしまうというと寂しい感じもするけど、地球の終焉である太陽が赤色巨星になって地球を飲み込むまでは50億年掛かると言われているし、著者の主張する海の終焉説だって10億年のオーダーなので今現在で騒ぎ立てるような心配をする必要はない。 本書は海洋調査の手法などあまり興味を惹かれない項もあったけれど、内容の濃い一冊だった。
海が生まれる前提として宇宙や太陽の誕生から書いてあるので誰にでも読める本だと思う。

 ★★★★☆
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