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好循環の方法 - 書評 - 『評価と贈与の経済学』内田樹,岡田斗司夫

土曜日, 4月 06, 2013
この2人の話している内容はまだ時代が追いついて気がするが、これからの時代で思考するにはピッタリな本である。

本著の表紙は鰯(イワシ)なのだけど、これは岡田斗司夫が言う「鰯化する社会」から来たのだろう。
日本の現状を鰯の群れに例え、群れたり離れたりを繰り返すが芯がないと表現するのは慧眼である。


評価と贈与の経済学 (徳間ポケット)
  • 作者:内田樹,岡田斗司夫 FREEex
  • 出版社:徳間書店
  • 発売日: 2013-02-23

本書は贈与経済の内田樹と評価経済の岡田斗司夫の対談本である。まず感じたのは内田樹の印象が良くなるというのが第一印象。
冒頭で岡田斗司夫もそのように書いてあるけど、それは見事に成功している。
印象が良くなると、不思議なことにその意見も聞こうとなってしまうものである。
例えば、人と人の関係はどちらかが先に貸しをつくるかで始まり、同じことで返すのではなく違うことで返すことで成り立つとかは成る程と思った。
途中でうまく噛み合ない所もあるけど、岡田さんが何度も説得しようとする所が面白い。
岡田さんは極めて分析的で、物事を分解してフレームを「こうなんだよ」と説明するのがうまい人。その内容も説教臭くなく思わず笑ってしまうのが凄い。
そして、『評価と贈与の経済学』というタイトルだが、働いて金を稼いだとしてもそれは周りの人からパスを受けているだけと前提をおいている。
もらったパスは自分で貯めずに、次の人へパスを回さなきゃいけないという内田樹の提唱する贈与経済と、困っている人をまず助けて様々な評価を得ることでポジティブな関係が循環していき、結果的に自分に帰ってくるという岡田斗司夫の提唱する評価経済は、本質的には同じである。
こういった思想が出て来て話題になるのは一つは日本の経済成長力、資本主義が限界だという世間の空気感からだろうと推測する。
この空気感はマイケルサンデル著『それをお金で買いますか――市場主義の限界』で問題点として具体的に提示されている。
そしてシェアという概念は、今の世界の潮流の一つだろう。
しかし、こういったコミュニタリアニズムの主張ばかりが蔓延ると、内容を良く把握せずにこの新たな概念が答えだと信じ過ぎて本質を勘違いする人が増えるかもしれないと思った。
指摘事項として、この概念が通用するのはある程度人数の少ないコミュニティ内だけであるということだ。
本文で内田樹も40〜50人と言っているし、岡田さんの実践するFREEexやクラウドシティでも1000人弱である。
裏を返すと、インフラ自体は外部に依存しないといけないので、それだけで社会が成り立つことはないということだ。
各地で評価経済圏が広まった先に社会がどうなっていくのかという実践と具体的な内容が少し物足りない気もする。
色々示唆に富むないようなので読んでいろいろ思考してみて欲しい。

★★★☆☆


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